水星: Mercury


名前の由来と歴史

水星は古代中国では辰星と呼ばれていました。また、英語ではマーキュリーですが、ギリシャ時代には、明け方の星に対してアポロ、 宵の星に対してはヘルメスという2つの異なった名前が与えられていました。 マーキュリーはローマ神話では神々の使者で、商売と盗みの守護神であり、ギリシャ神話のヘルメスに相当します。翼のある帽子と靴をつけ、 2匹の蛇を絡ませた杖をもつ青年として描かれています。 マーキュリーの名前はこの惑星が天空を非常にすばやく移動するために付けられたものと思われます。

水星は紀元前3000年のシュメール時代には少なくとも知られていたと言われています。 ギリシャでは水星に対して2つの名前を与えていましたが、この時代の天文学者は両者が同じ星であることを知っていました。 ヘラクリタスは水星と金星は地球の周りでなく、太陽の周りを回っていることさえ知っていたようです。

水星探査はマリナー10号によって1973年から1974年にかけて行われました。この時、表面の45%をカバーする部分の写真が撮られています。


水星の物理量



水星は太陽に最も近くにある惑星であり、太陽系の中では8番目に大きな惑星です。約88日の周期で太陽の周りを回っています。



水星は木星の衛星であるガニメデや土星の衛星タイタンよりも直径で小さいのですが、質量は大きい。

水星の軌道は大変偏心していて、近日点は太陽から46x10^6 kmですが、遠日点は76x10^6 kmです。その軌道の近日点は歳差運動で非常にゆっくりと移動しています。19世紀の天文学者は非常に注意深く水星の軌道パラメータを観測していますが、その動きをニュートン力学に基づいてはうまく説明できていません。すなわち、全ての惑星の摂動を考慮しても、水星の近日点の移動の観測地はニュートン力学に基づいて計算した予測値よりも、100年につき43"だけ大きくなるのです。 この観測結果とその予測の差はわずかですが、本当の原因は長らく不明のままにされてきました。原因としてまことしやかにバルカン(Vulcan)と呼ばれる他の天体が水星の近くの軌道に存在するかもしれないなどとも考えられていました。 しかし、1915年にアインシュタインは一般相対性理論を適用することによって、観測値に一致する近日点の移動の予測値を示し、この問題をドラマチックに解決したのでした。この水星の動きに関する正確な予測は、一般相対性理論がいち早く受け入れる重要な要因ともなったのです。

水星の日周については、1962年までは水星表面の観測から、月が地球の周りを回るのと同じように、水星は常に同じ面を太陽に向けており、一日が一年に相当すると思われていました。しかし、これは1965年にドプラーレーダーの観測により間違いであることが解ってきました。現在は水星は太陽の周りを2回公転する間に3回自転することが知られています(公転周期:0.24年、自転周期58日)。この特殊な自転と公転の共鳴は、太陽による潮汐力が近日点付近で強く作用するために、その時の摂動力により自転の角速度が軌道平均角速度の1.5倍になるために起こっているとん考えられています。

眼視および望遠鏡でみた水星

水星は内惑星であるため、月のように満ち欠けします。視直径は5"から、内合で13"まで変化します。 太陽から28゜以上離れないので、夕方の西空、明け方の東空に見えるだけです。 水星が地球に近づいた時は、太陽と地球の間に入るため、地球から観測されるのは水星の暗黒面となります。 その他の場合は視直径はかなり小さくなる上に、日中観察しなければならなくなります。このような意味では観測しづらい惑星でもあります。 望遠鏡で見た水星は、月に非常によく似ています。

温度

水星の公転と自転の関係から、水星表面からみる太陽の動きは非常にゆっくりとしており、水星の昼と夜は非常に長く地球の3ヶ月に相当します。 このため、温度変化は太陽系の中でも最も激しい方で夜の面における90Kから太陽直下で700Kまで変化します。 金星の温度はこれよりわずかに高くなりますが、大変安定しており、これほど変化はしません。

表面構造

水星は多くの点で月に似ています。水星と月の表面構造の類似性は表面からの反射光度および光度−位相曲線の一致からも言えることが出来ます。 その表面は多くのクレーターで覆われており、これらのクレーターは大変古いものです。 大気はなく、地球のようなプレートテクトニクスもないとされています。

内部構造

水星は月よりもずっと密度が高く(5.43 gm/cm3 vs 3.34)、太陽系の主系列の中では、 地球に次いで2番目に密度が高い惑星です。地球の密度は一部重力による圧縮の影響がありますが、 この影響がなければ、水星の密度は地球よりも高くなるかもしれません。 これは、水星の鉄からなるコアー部分は地球のものよりも相対的に大きいことを示しているわけです。 逆に、シリケート層からなるマントルと外皮は相対的に薄いものとなっています。 水星の内部は大きな鉄分からなるコアーでできており(コアーの一部は溶けた状態で存在)、 その大きさは1800 から1900 kmと推定されています。この場合、外側のシリケート層は500から600kmの厚さになります。

水星の表面にはリンクリッジと呼ばれる非常に多くの長大な断層崖が存在しています。 この断層崖は高低差が2〜3kmで長さが数百kmにも及ぶものです。 幾つかのものはクレーターのリングを横切るような圧縮によって形成された逆断層の構造を示しています。 これは、惑星の形成期の高温時から、冷却するときに惑星表面が約0.1%程度(惑星の半径にして約1kmの減少)収縮することによりできたと考えられています。

水星の表面にある最も大きな地形のひとつに直径約1300kmのカロリス盆地がありますz。 これは月の大きな盆地とほぼ同様なものと考えられています。月の盆地と同様に、おそらく惑星誕生時の大きな衝撃によってできたと想像されています。 この衝撃の影響は惑星の反対側の地形にも影響を与えており、反対側の比較的平坦な地形の中に無数の丘や谷が破壊によって形成されています。 同様な地形は月のオリエンタール盆地の反対側にも見られます。

水星には、長大な断層崖やクレーターに富んだ地形に加え、比較的平坦な平原も見られます。 これらの中には、古代の火山活動によって形成されたものや、衝撃によるクレーターからの噴出物の堆積によって形成されたものがあると思われます。

水星の火山活動は形成期のもので、最近起こったという証拠はありません。

水星の北極地域(マリナー10号の観測外の地域)のレーダー観測によると、いくつかのクレーターで守られた陰には氷の存在の証拠が示されています。 すなわち、水星の南北の極域に水の存在を示すと考えられる非常に高いレーダー反射率と偏光特性を示す地域が発見されているのです。 得られたレーダー信号の反射率と偏光の特性は木星型惑星の氷衛星や火星の氷極冠とよく似たものであります。 氷以外の可能性もないわけではありませんが、氷の可能性が高いと考えられています。水星地域のクレーターの中には太陽光の当たらないところがあり、 こういう場所では温度は60K以下になっていると推定されており、、氷も数十億年存在しうると言われています。

  • 水星は僅かながら磁場を有しており、その強度は地球の約1%です。


  • 水星には衛星がありません。




  • 水星のデータ表


    水星と地球の比較
    項目 水星 地球 比率 (Mercury/Earth)
    Mass (1024 kg) 0.3302 5.9736 0.0553
    Volume (1010 km3) 6.085 108.321 0.0562
    Equatorial radius (km) 2440 6378 0.383
    Polar radius (km) 2440 6356 0.384
    Volumetric mean radius (km) 2440 6371 0.383
    Ellipticity 0.0000 0.0034 0.000
    Mean density (kg/m3) 5427 5520 0.983
    Surface gravity (eq.) (m/s2) 3.70 9.78 0.378
    Escape velocity (km/s) 4.3 11.2 0.384
    GM (x 106 km3/s2) 0.02203 0.3986 0.0553
    Bond albedo 0.056 0.385 0.145
    Visual geometric albedo 0.11 0.367 0.300
    Visual magnitude V(1,0) -0.42 -3.86 -
    Solar irradiance (W/m2) 3566 1380 2.584
    Black-body temperature (K) 442.5 247.3 1.789
    Moment of inertia (I/MR2) 0.33 0.3308 0.998
    J2 (x 10-6) 60. 1082.63 0.055


    Orbital parameters Mercury Earth Ratio (Mercury/Earth)
    Semimajor axis (106 km) 57.9 149.6 0.387
    Sidereal orbit period (days) 87.969 365.256 0.241
    Tropical orbit period (days) 87.968 365.242 0.241
    Perihelion (106 km) 46.0 147.1 0.313
    Aphelion (106 km) 69.8 152.1 0.459
    Synodic period (days) 115.88 - -
    Mean orbital velocity (km/s) 47.89 29.79 1.608
    Orbit inclination (deg) 7.00 0.00 -
    Orbit eccentricity 0.2056 0.0167 12.311
    Sidereal rotation period (hrs) 1407.6 23.9345 58.785
    Equatorial inclination (deg) 0.0 23.44 0.000

    水星の磁場 双極磁場強度: 0.0033 gauss-Rh3 回転軸に対する双極子角度: 169 degrees Longitude of tilt: 285 degrees (from Mercury I flyby) 115 degrees (from Mercury III flyby) Note: Rh 水星半径 2,439 kmを示す。


    水星の大気 地表面気圧: ~10-15 bar (0.001 picobar) 平均温度: 440 K (590-725 K, 太陽面側) 大気組成: 98% ヘリウム (He), 2% 水素 (H2)

    写真はこちらを参考にして下さい。
    NSSDC Photo Gallery: mercury


    cosmic toaster