MARS




御存知のように、火星はSF作家に地球以外の人類の居住地として太陽系のなかでは最も好まれた惑星です。最近は火星にもかって生物が存在していた可能性がある証拠が発見されたと報道されるなど話題が沸騰しています。また今年はいくつかの火星探査機が打ち上げられるなど今後さらに新しい研究成果が発見される可能性もあります。しかし、有名な「火星の運河」やSF作家によって描かれた様々な光景は、ほとんどが想像の産物にすぎませんでした。一説によればイタリア語の断崖を意味するカナリを英訳する時に運河を意味するcanalと誤訳されたとも言われています。

名前の由来

和名の火星はまさに火の星で、赤い色の星を表しています。一方、英語のマルス(ギリシャではアレス)は戦争の神を指します。火星にこの名前が与えられたのは、おそらくその赤い色や気まぐれに変化する明るさや運動が、戦火や流血を想像させることに起因するものと思われます。また、中国でも火星を「けい惑(けいごく、けいわく)」と呼びますが、これはわざわいや戦乱を予兆する星を意味するもので、火星を妖星と考えたためと思われます。 一方、ローマの神マルスはギリシャの神アレスと同一化される前はもともと農業の神でした。火星の開拓や植民を夢見る人たちにとっては、妖星と言うよりも農業の象徴の方が好みかもしれません・・・。

大きさ、運動、位置、質量、距離など

火星は太陽から4番目に位置する惑星で、惑星の中では7番目の大きさです。

距離は以上の通りですが、軌道離心率が0.09338なので実距離は2129万km増減します。地球のすぐ外側の惑星なので、地球からの距離は時期によりかなり変化します。合(ごう)の時は平均3億7754万kmですが、衝(しょう)の時は平均7834万kmにまで近づきます。地球の軌道も楕円ですが、火星の軌道もそれ以上に細長い楕円なので最接近距離も時期によって異なり、5550km(近日点付近での衝)から1億km(遠日点付近での衝)までの範囲にあります。一般に前者を大接近(8月下旬:水瓶座付近)、後者を小接近(2月下旬、しし座付近)と呼ばれています。火星の公転周期は約1.88年で、780日(2年2ヶ月)毎に地球に接近することになります。また、15年毎に近日点付近で衝になります。次の大接近は2003年の8月頃になります。

眼視および望遠鏡で見た火星

火星は肉眼では明るい赤い色の星に見えます。火星の視直径はその星位によって大きく変化します。合のときは3".5で最小となり、近日点付近の衝では25".1で最大になります。遠日点付近の衝では視直径は13".8程度です。明るさは合の時には平均+1.6等ぐらいですが、小接近では-1.1等級程度、大接近では-2.8〜2.9等級程度になり、この時には金星に次いで明るい星となります。このように火星は比較的見やすい天体であるため、先史時代より知られていたものと思われます。

火星は外惑星であるため、合と衝の時には満月形となりますが、それ以外の時には周囲が少し欠けた程度に見えます。可視領域における火星の反射能は約0.15で、反射率は波長が長くなるにつれて急激に増加する傾向にあります。火星が赤い色に見えるのはこの波長のためで、表面の明るい地域ではこの影響が顕著に出ています。 望遠鏡を通して火星をみると、全体が赤みを帯びて輝いて見えますが、その中に暗い複雑な模様と白く輝く極冠が見えます。雲やもや等の大気現象、極冠、数百kmの大きさの模様から、もっとスケールの小さな模様が見えることがあります。

火星の地形

火星は地球よりもずっと小さいわけですが、その表面はおおよそ地球の陸地の面積と同じくらいあります。 地球以外では、火星は最も変化んだ地形をしており、なかには大変おもしろい地形や雄大なものがあります。1969年、マリーナ6号、7号は火星に様々な地形があることを明らかにしています。大部分の地域は大小のクレーターから成り立っていますが、以下に示すような広大な平原などもあります。


地表面の大部分はクレーターを有する非常に古いものであるが、しかし隆起した峡谷や尾根、丘や平原などのずっと年代の新しいものもある。

火星の南半球はクレーターを有するずっと古い高地で、いくらか月に似ています。 反対に北半球はずっと年代が新しく、高さが低くて複雑な歴史を持つ平地から構成されています。その境界付近では数キロメーターの高低変化が生じているように思われます。 このような急激に大きく二分された理由はまだよくわかっていません。 (火星が成長増大直後に非常に大きな衝突があったために起こったのではないかと推測されています。)最近、科学者の中には急激な高度の変極点は実際に最初の場所であったかどうか疑問を持ち始めたものがいます。

火星表面の大半を占める明るい地域は、乾燥した非常に細かい砂によって覆われています。この砂粒は赤い色をしていますが、おそらく酸化鉄を含んでいるものと思われます。この地域にはなだらかな起伏はありますが、高い山脈は観測されていません。一方、火星の暗い地域はかなり安定した形をしているので精度のよい地図が作られている。しかし、この領域の反射能、色、偏光度などは季節により変化している。この変化は極冠の成長、消失のサイクルとも関連しているようである。

火星には多くの場所で大小の河川系を含め浸食の明らかな証拠が見られます。過去に地表面に明らかに水が存在したことを示しています。大きな湖や海洋があったかもしれません。しかし、このような水の存在は大変古い時代に、さらに短い期間であったと思われます。浸食を受けた河川(チャンネル)の形成された時代は約4億年前と推定されています。

火星の内部構造

火星の内部は表面からのデータと惑星の統計量から推論によってのみ知ることができる。半径1700kmの密度の高いコアー部分(鉄が主体で、硫黄、酸素などの軽元素とニッケルを含む)と地球よりもやや密度の高い岩石質の溶けたマントル(鉄を含んだ珪酸塩からなる)と薄い地殻(数10km?)からできているという推定が最も確かなものと思われます。 全体の磁場の弱さは火星のコアーが固体であることを示していると推定されます。また、火星の密度は他の地球型の惑星と比べて相対的に低く、これはコアー部を構成する鉄分に含まれる硫黄分が多いことを意味しています。

水星や月のように、火星は活発なプレートテクトニクスを起こしていないように見えます。 これは地球に一般的にみられる褶曲山脈のような地表面の水平動を示すような証拠が見られないことによります。プレートの水平動が見られないことと関連して、地殻の下のホットスポットも表面に固定した位置に留まっています。低い表面重力と同時にターシスの断崖やその巨大な火山がそれを説明しています。

火星の形成初期には、火星はもっと地球と似ていたものと思われます。地球の場合、その二酸化炭素の大部分が炭酸塩岩を形成するのに消費されてしまいましたが、火星の場合には地球のようなプレートテクトニクスがなかったために、二酸化炭素を大気中に還してリサイクル利用することができず、このために重要な温室効果が維持できなかったものと思われます。そのため、火星の表面は、太陽からの距離の割には地球よりもずっと冷たくなっています。

火星の大気と雲

火星の大気層は薄く、その成分は大部分が二酸化炭素(95.3%)と窒素(2.7%)、アルゴン(1.6%)と少量の酸素(0.15%)や水(0.03%)から成っています。火星の平均大気圧はわずかに7ミリバールで、地球の1%以下の値です。しかし、高度によって低い所の9ミリバールからオリンポス山(Olympus Mons)の頂上で1ミリバールと大きく変化します。また、時には何カ月にもわたって惑星全体を覆い尽くすような強い風や砂嵐を起こすような十分な厚さはあります。大気の大部分は二酸化炭素ですが、火星の温室効果は表面温度を5度上昇させる程度の強さしかありません。

火星には両極に大部分ドライアイスから構成される永久氷冠があります。この氷冠はダストの濃淡の変化に応じた層状の構造を呈しています。北極の夏には、二酸化炭素は完全に昇華し、水分から成る氷の層のみが残されます。二酸化炭素が完全に消えないので、南極より下では同様な氷の層が存在するかどうかは明らかではありません。層状構造のメカニズムはまだよくわかっていませんが、おそらく軌道面に対する火星の赤道軸の傾きの変化に起因する長期の気候変化に関連しているものと思われます。また、地下や高度の緯度の低い地表には 氷が隠れているかもしれません。極冠の広がりの季節的な変化はグローバルな大気圧をかなり変化させます(バイキングの観測では、その測定点の約25%)。

火星にはグローバルな磁場はありません。

少数の隕石は火星から飛来すると考えられています。

火星の探査と話題

最初に火星を訪れた宇宙船は1965年のマリナー4号でした。このあと、1976年の2つのバイキング着陸船を含む幾つかの宇宙船が探索を行っています。 火星の軌道はかなりの楕円軌道です。この結果、ひとつの現象としてthe subsolar pointで約30℃の温度変化があります。バイキングの調査によって火星の温度が150Kから295Kまで変化することが明らかになりました。

1996年8月6日、David McKay等は火星の隕石(南極隕石のひとつALH84001:84年発見のもの)に有機化合物質(多環式芳香族炭化水素)の痕跡を最初に発見したと発表しています。この隕石は45億年前のもので非常に奮い年代のもので太陽系の形成された頃と同年代のものと思われます。隕石は通常の隕石と異なり、炭酸塩鉱物をかなり含んでいました。また、McKay氏等によると、発見された化合物は磁鉄鉱や磁硫鉄鋼の存在や炭酸塩鉱物表面に見つかった卵形および筒状の物質の集合体の存在などの他の証拠を合わせて考えると、古代火星に微生物が存在したことを示す有力な証拠かもしれないと思われるとのことです。この発表はNASAが長期にわたって検討してきた結果として、発表したものであり信憑性はかなり高いと判断されます。これまでの、火星探査では明らかでなかった点だけに、今後の火星探査でによって古い地殻の更なる調査が進むことが期待されます。

最近の火星探査計画のスケジュール
1996年11月7日 マース・グローバル・サーベイヤーNASAが火星表面の軌道探査を行うために計画した惑星探査機で、1997年に火星到達予定である。火星表面の1mの解像度カメラとレーザー距離測定により詳細な地図の作成を計画、磁力計や熱放射計などの計測器を搭載。/TD>
1996年11月16日 国際協力マルス96ロシアとヨーロッパの共同研究による火星探査計画。周回軌道衛星1機と着陸探査機4機を97年9月に送り込む予定だったが打ち上げに失敗した。
1998年12月4日 マース・パス・ファインダー火星の古いアウトフローチャンネルを探査するために計画された着陸探査機。97年7月4日の米国独立記念部日に着陸予定。着陸ステーションと地表探査機からなる。
1998年〜1999年 マース・サーベイヤー

火星の衛星

火星は表面に大変近い軌道を回る2つの小さな衛星を持っています。

         
名称距離半径質量衛星発見者発見年
(000 km) (km) (kg)
フォボス(Phobos) 9 11 1.08e16 Hall 1877
デイモス(Deimos) 23 6 1.80e15 Hall 1877

写真はこちらを参考にして下さい。
NSSDC Photo Gallery: mars


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